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レンブラントの夜警

ピーター・グリーナウェイの『レンブラントの夜警』を観た。
映画館で映画を見るのは久しぶりである。
ハリウッド系の超大作やテレビ番組の劇場版ばかりやっているシネコンには足が向かないので、
ついつい映画館から足が遠のくことになる。
ところが、我が町にも一つだけ、他ではやらない映画を掛ける小屋がある。
ふだんはめったに行かないのだが、たまたま新聞の映画案内で見つけたのが、
久方ぶりのグリーナウェイだったわけだ。

もともと画家志望だったグリーナウェイの新作はなんとレンブラント。それも『夜警』ときた。
後から上に塗ったニスのせいで表面が黒ずみ『夜警』と呼ばれることになったが、
発表当時は昼間の光景を書いたものだというのが近年修復された結果分かった事実。
それでも、映画の中では黒っぽい画面のままで『夜警』という解釈なのがおもしろい。

野外のシーンは一部にとどまり、ほとんどはセット撮影。
キャメラ位置を固定した撮影はまるで舞台を観ているような感覚である。
彩度を落とした色彩、つねに鳴り続ける弦楽器。
グリーナウェイお得意の裸も小太りのレンブラントのそれだし、
久しぶりの映画館の暗闇に眠気に誘われてしまった。

映画のポイントになるのは『夜警』という絵画史に残る傑作に秘められた謎に迫るというもの。
『ダ・ヴィンチ・コード』の向こうを張ろうというわけではない。
確かにそれまでの群像を描いた肖像画とは異なるドラマティックな表現が気になる『夜警』である。
制作の裏に何か隠されたわけがあっても不思議ではない。

ネタバレは避けたいので、その秘密については見てもらうこととして、映画自体は今ひとつ物足りない。
美術好きの監督なら、画家が絵を描くところをもっと大事にしてほしかった。
何しろ相手がレンブラントである。ポロックを演じたエド・ハリスのようなわけにはいかないのは分かる。
そうはいっても、ほとんどキャンバスを見せないのは、期待を裏切ったと言われても仕方がないのでは。
えんえん馬の寝転ぶシーンを見せられた黒澤の『影武者』以来のがっかりである。

絵の裏にドラマを見るのは勝手だが、絵描きのドラマというのは絵の中にこそあるのではないだろうか。
「レンブラント・ライト」と呼ばれる独特の光線の秘密や、みごとな筆触の秘密をこそ暴いて見せてほしかった、というのが偽らざるところ。

名作を模したポーズが複数のシーンで描かれているあたりに、ようやくニヤリとすることができたのであった。
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by abraxasm | 2008-06-15 19:00 | 映画評

覚え書き


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