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会議

年度末に入り、人事異動がからんだ職場の体制づくりが風雲急を告げている。
ふだんは定時で帰宅が許されるのだが、この時期ばかりはそうも言っていられず、遅くまで会議が続く。
深夜に帰宅したら、ニケが玄関に出迎えてくれた。
よほど心細かったのか、トイレにはいるとドアを引っ掻き、入れてとせがむ。
風呂にはいると硝子戸の前でニャと鳴く。寒いので細めにドアを開けると、
足拭きマットの上で、ドアの隙間からこちらをのぞいている。
長毛種の猫は基本的に水が嫌いだ。たまり水を舐めたりはするが、足に水が触れるのを嫌う。
それでも、またいなくなるのではないかと心配で、そばから離れられないのだろう。
真冬の深夜である。二度炊きのできない深夜電力の風呂だから、少し湯はぬるくなっている。
隙間から風は入るし、浴室の熱は逃げてゆく。それでも辛抱しながらドアを開けたまま入った。
風呂から上がり、急いで着替えをして居間に戻った。
ニケを膝にのせ、チーズとパンをあてに、飲み残しのワインを飲んだ。
少し人心地がついた。この会議は明日も続く。
しばらくはニケにも辛抱してもらわなければならない。
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by abraxasm | 2008-02-26 17:47 | 日記

ニケ

明け方、ニケが階段の手摺りで爪を研ぐ音で目がさめた。
そういえば、昨夜は一緒に寝たはずだが、夜中に起こさなかった。
いつもなら、何度も布団の中に出たり入ったりを繰り返すニケである。
布団の上に寝てみたり、左腕を枕にしたりと我が儘気儘なニケのせいで、
ここ何年かはゆっくり布団の中で体を伸ばしたり、寝返りを打ったりしたことがなかった。
誰にも起こされず、自然に目を覚ましたのもずいぶん久しぶりである。

爪研ぎをした後、いつもならまっすぐ枕もとに飛んでくるニケがいっこうに姿を見せない。
そうか、と思い当たった。二日前から二男が帰ってきている。
今回は怒りもせずに迎え入れたから、二男も気をよくしていた。
実は今、ニケにとっては悩ましい季節の最中なのだ。
昨夜も二男に撫でられながら平べったくなって、くぐもった声をあげていた。

前々から、その季節になるとふだんは傍によりもしない長男のベッドに行きたがるニケだった。
少しニケが怖い長男は、顔に体を押しつけてくるのがうれしくもあり、困るようでもあったのを思い出す。
猫と人間のちがいこそあれ、若い雄からは、年とった雄とはちがう何かが出ているのだろう。
はじめはゆっくり眠れた気持ちの良さが勝っていたのだが、
昨日までの親密さとはうって変わったニケの仕打ちに寂しい思いがしてきた。
いくら自分では若い気分でいても、もう猫からも老いぼれ扱いされるようになってしまったのだ。
バレンタインデーに、めずらしくたくさんもらったチョコレートに少し気をよくしていたのに。

二男はしばらくしたら下宿先に戻るが、地元に就職が決まったので四月からは度々顔を見せるだろう。
以前は、夕方になると高校から帰る二男を居間の掃き出しの前で待っていたニケである。
また、あの頃のように二男の帰りを待つのだろうか。
二男はひとり暮らしがしたいようだが、ニケがなつけば毎日でも顔を見せるに決まっている。
そうなれば、妻も寂しがらずにすむだろう。

悩ましい季節が去った後、ニケがどういう顔をするのかが少し気になる。
素知らぬ顔をしてベッドに入ってくるつもりなら、無論、こちらに異存はない。
静かに布団の肩口を開けて迎え入れるまでのことである。
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by abraxasm | 2008-02-16 12:33 | 日記

雪景色

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海上に発達した低気圧の影響で朝からの雪である。
めずらしく積もりはじめたので、昼はパスタにした。
どこにも出かける予定もないので、昨夜の残りのワインで雪見酒と洒落こんだ。
カウチに座り、膝掛けを用意して、読みかけの本を読んだ。
眠くなり少しうたた寝をしていたら、前の家の子どもたちがはしゃぐ声がした。
妻も外に出て小さな雪だるまを作っている。
今年くらい降ると、雪に心が動かなくなる。
それともただの歳のせいか。
「あなたも外に出てあのいいカメラで雪景色を撮ろうとは思わないの?」
妻に挑発されて重い腰を上げた。
いいカメラはポケットに入らないので、古い方を手に外に出た。
私鉄の線路を跨ぐ橋の上に出てシャッターを切った。
ほとんど車が通らない夕暮れの町は静かで、どこやら懐かしさが感じられる。
暗くなって、チェーンの音が響くようになった。
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by abraxasm | 2008-02-09 17:39 | 写真

引っ掻き傷

朝、寝ぼけ眼で顔を洗い、鏡をのぞき込むと、鼻の脇と頬に引っ掻き傷があった。
指に水をつけて傷のあたりをこすってみたが、こびりついた血は、剥がれなかった。
ニケの爪だ。ずっと切っていないので、剃刀みたいに尖っている。

寒くなってからというもの、ニケはぼくの布団で一緒に寝ている。
左腕を手枕にして、右手で顎の下をかかせてはごろごろ喉を鳴らしている。
冬の布団は寒いから、ニケと寝るのはうれしいのだが…。
ごろごろが終わって寝息を立てたかと思うと、突然目を覚ましては布団から出ていく。

そして、枕許に座り込んではぼくの額を舐めたり、頬を咬んだり、瞼を前肢で引っ掻いたりする。
起きてほしいのだ。布団を少し開けてやると、またもぐりこんできては、ごろごろの繰り返し。
一晩で、これを何度もやるものだから、こちらは眠くて仕方がない。
つい、布団をひっかぶってタヌキ寝入りを決め込むのだが…。

顔が外に出ていると、遠慮して爪を引っ込めてトントンと顔を叩くのだけれど、
布団にもぐるともういけない。獲物を追う本能が目覚めるのか、本気モードに切り替わる。
多分昨夜もそうだったのだろう。眠くてよく覚えていないが。
思いっきり伸ばした前肢の爪先が頬をかすめたのだろう。

さすがに目立つ。勤め先の若い子に、訳を訊かれ、猫に引っ掻かれたというと、
「abraxasさんは猫が大好きなようですが、猫には嫌われてるんですか?」
と、怪訝な顔をされた。
この間から、年に何度かある例の時期に入っていることもあり、ニケも抑制が効かない。
いつもは絶対爪を立てたりしないのだが、説明すると長くなる。

風呂に入って顔を石鹸で洗っても、傷はまだ消えない。
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by abraxasm | 2008-02-04 22:34 | 日記

雪が降る

寒い日が続くと思っていたら、また雪が降った。
休日の朝、ニケが起こしに来ないなと思いながら目をさました。静かである。
寝室の壁の向こうは路地。そこから数メートルも行けばバス通りだ。
日曜日とはいえ、この静かさはどうしたことだろう。そう思いながらぐずぐずしていた。
先に起きた妻が、「雪よ!」と、はしゃいだ声をあげた。そうか、雪か。
積もった雪が音を吸収するので、静かだったのだ。それに日曜の朝が雪なら誰もわざわざ外に出ない。

雪は夜の裡に降ったのか、今はやんでいた。屋根瓦や遠くの山には残っているが、道路は走れそうだ。
車を換えたら、タイヤハウスに干渉するとかで、チェーンが着けられない。スタッドレスならインチダウンだ。
そんなわけで、雪の日は出かけることができない。太平洋側にある我が町は雪に見舞われることは少ない。
スキーに行かなければ、冬用タイヤはまず要らない。大雪の日はタクシーかバスで出勤すればいいだけのことだ。

雪明かりで仄明るい窓辺で昨日から読みはじめている高橋英夫の『時空蒼茫』を読んだ。
独文学者らしい硬質のレトリックが、雪の日の静謐さによく似合う。久しぶりに評論を読んだ。
小説とはちがった明晰な明るさが評論にはあり、それが気分を高揚させる。
長編だが、個人的な記憶から連想した文学作品を次々と引用する手際の良さに博学さが偲ばれる。
博引旁証というのではない。絡み合った事象が自然に解きほぐされるような味わいが心地よい。

読み終えて図書館に返却すると、リクエストしてあった本が三冊取り置いてくれてあった。
四方田犬彦の『翻訳と雑神』『日本のマラーノ文学』と、イアン・マキューアンの『土曜日』だ。
マキューアンの方は、多くの読者がいそうだが、四方田の二冊はどうだろうか。
精読しないと、買ってくれた図書館に悪いような気がする。
ま、来週は三連休だ。しっかり読めるだろう。読み終えたら高橋の前著『藝文遊記』も借りてこよう。
マキューアンと相性があったら、読むべき本がまた増える。痛し痒しである。
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by abraxasm | 2008-02-03 19:00 | 日記

一志温泉

二年ぶりである。
前にきたとき消毒臭がつよかったのが印象に残っていて、それっきりになっていた。
妻が考えていたのは梅の花を見がてらの温泉行だったのだが、まだ少し早かろうというので、急遽変更した。
日帰り温泉には最近けっこう出かけているので、行き先探しに迷ったあげくが、
一志温泉に決まったのは、最近新しい道ができ、一度走ってみたかったからだ。

まだ途中までしかできていない道をおりたら、一気に田舎道になってしまった。
昼時なのでどこかで食べるつもりだったが、そのまま温泉へ。
さいわい温泉に併設された食堂が営業中だったので、定食を食べることができた。
とろろ定食とちらし寿司定食だったが、どちらも期待以上に美味しかった。

温泉だが、値下げしたのかレンタルのタオル、バスタオルつきで550円だった。
前にきたときとはちがう方にはいった。半円形の浴槽の前に露天風呂があり、洗い場も多い。
お湯はやはり消毒臭を感じるが、つるつるした肌触りは美人の湯系。
サウナはスチームで低温のため、十分以上入っていられるが、
どこまでが汗でどこまでがスチームのせいなのかよくわからないのが難点。

露天風呂は、周りを浴室が囲んでいて見晴らしが利かないのが残念。
浴槽も多く、洗い場も多いのだが、全体的に狭く感じられて気持ちの抜けが感じられないのが惜しい。
脱衣室にはドライヤーの数も多く、ロッカーも広めなので使い勝手がいいだけにもったいない気がする。
距離的には近いので、ローテーションの中に組み入れるだけのポイントは獲得したと思う。
常連のお年寄りが多く子どもが少ないので、浴槽の中でおしっこをされる心配がないのがいい。

隣に図書館があるのも気が利いている。帰りにのぞいたら、なかなかの品揃えであった。
市民でないと貸し出しはできないが、温泉帰りにちょっと一息入れて読書というのも一興だろう。
他の温泉にはない特色ではないか。
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by abraxasm | 2008-02-02 21:15 | 日帰り温泉

覚え書き


by abraxasm