蕎麦屋の酒
2007年 12月 24日
近くに蕎麦屋ができたのを雑誌で読んだ。なんでも、有名な店で修業をしてきたらしい。
特に、肴を意識して酒を飲ませることを考えているところが気になる。
蕎麦屋の酒というやつにあこがれている。
散歩の途中で立ち寄り、板わさか、鴨南蛮のぬきあたりで、ちょいと一杯。いいなあ。
問題は足である。どこへ行くにも車という地方都市では、おいそれと酒を飲むことができない。
そのために電車やバスを乗り継いでというのも野暮だ。
山間にある蕎麦屋が気に入っているが、車がなくてはかなわない。
そこに、近くに蕎麦屋が開店というのだから、行かないという手はない。
行ってみた。造りは古民家風。このあたりの民家を手直ししたのだろう。
店の中に白いトライアンフのロードスターが飾ってあるのが、ちょっと洒落ている。
店員は屋号を入れた黒いお仕着せを着ている。
黒いバンダナが流行りのラーメン店みたいなのが気になる。
いかにも修業仕立てといった感じの若い男が一人蕎麦にかかりきりだ。
後は、アルバイト風の若い女の子と、経営者らしいマダム風の年配の女性だけ。
天麩羅になると一人では手が回らないのか、女性陣がカウンター内に入って手伝っている。
もう一つ蕎麦屋の風情に欠ける。田舎の喫茶店の雰囲気だ。
蕎麦が来た。のどごし歯触りともなかなかのものである。
十割蕎麦もめずらしくなくなったが、このシコシコ感は、ちょっとない。
問題はつゆにあった。どうにも頼りない。何かが足りない、という感じなのだ。
かえしを忘れたのか、醤油を水で薄めたような、あっさりし過ぎの味。
そば湯を入れて飲んでも、やはり物足りなさが残る。
妻の意見も同じであったから、まちがいはないだろう。
修業した店の味なのかもしれない。蕎麦にも風土の差がある。
濃厚なたまり醤油の味がベースのうどんを好む土地柄に、あのつゆが合うかどうか。
全国から観光客の来る門前町に開いた店である。案外、旅行客にはうけるかもしれない。
蕎麦屋の酒は、もうしばらくおあずけということらしい。